かみちゅ! >> かみさま〜〜! 助けてください!なんて言いません――と言うか、他人(神)様に人生を左右されるなんてご遠慮申し上げますけど――けど、相談に乗るぐらいのことはしていただいてもバチはあたりませんよね? その代わり、私も神様の相談に乗ってあげますから。……え? まぁ、頼りないのは、お互い様ってことで。

かみちゅ! 1 [DVD]

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「光恵ちゃん」
「ん?」
「私、神様になっちゃった」
「何の?」
「わかんない。昨日の夜、なったばっかだから」
「ふぅん。」

これはまさしく,名実ともに「神」アニメ.

個人的には宗教観のマッチが良い.フィクションの場合はどうしても「作品の世界オリジナルの神様」に頼りがちになってしまうせいか,本作のようなのがあまり無いのがこれまで物足りなかった.

* * *

さて,いったい何が琴線に触れたかというと大きく3つある。

「土地」
坂のある街にどうにも憧れる.尾道の他には,倉敷,長崎,熱海,コリコ(「宅急便」でキキが修行してた街),えとせとら.

「地域性」
地域のつながりというか,大人が子ども達に気を掛けている感じが伝わってくること.(もっとも,中学高校の頃って,そういうのが鬱陶しかったりもするんだけど.)

「宗教観」
宗教観が自分のそれとマッチしていること.だいたいそもそもだって,神が人に影響できるなら,人だって神に影響してるハズなので.(あくまでも僕個人の信条なので,そう思わない方はスルーするように.)

さて,神との交流の物語と言えば「千と千尋の神隠し」が思い浮かぶ方も多いだろうが,神の世界と人の世界が隔絶されていた点で本作に及ばない.木の穴を転げ落ちたアリスや竜巻にとばされたドロシーもそうだが,「境界」を越えて別の世界に移動する話はあくまでも非日常の物語であって,むこうの世界にいる間はこっちの世界を否定することもできるし,夢から覚めれば(こっちの世界に戻れば)それら(あっちの世界での出来事)はもう「無かった」ことにできてしまう[※1].

一方,本作のようにこっちの世界とあっちの世界が混在していれば,安易に他方の世界を否定できない分,設定にもストーリーにも具体性が求められる.もちろん,後者の方が読者・視聴者にストーリーを納得させるのは難しい.この点については「ぽんぽこ」をかなり評価しているのだけど[※2],後半,たぬきが人間に迎合[※3]しはじめてからつまらなくなったのが非常に残念だ.(ただし,「無かった」ことにされる心配がないので見ているこっちは安心できる)

それゆえ,「私も小さい頃は(神様が)見えてたし」という祀の台詞(つまり,成長に伴い神通力が弱まる)に,物寂しさが募る.成長とは,得ることと失うことだ.


※1 ただしこれだけは誤解して欲しくない.その体験は,現実だったか空想だったかに関わらず,間違いなく本人(千尋もアリスもドロシーも)に影響を与えた.それだけで十分意味がある.
※2 しかもそれが,リアリティ指向の高橋監督作品であることを忘れてはならない.
※3 と言っても媚び入るわけではなく,全面戦争を始めたのであるが,人間がお化けの類に恐怖を感じるだろうというステレオタイプに甘えてしまった.